Commercial Trades Institute model TC-10「真空管チェッカー」の掃除と修復。入手から長きの年月を経てはじめて通電・動作チェックしました。昨年夏前からはじめた物置整理で続々と発見されるジャンクのひとつです。オークション購入・到着・そのまま放置というパターン。

「ヒースキットTC-2」のコピー品らしく回路図を見ると確かに基本配線は一緒です。youtubeには同製品の動作確認動画があります。こっちが本家かもしれませんが、ヒースキットの2に対して10と数字が多いので、やっぱりコピークローンの可能性が大きいですね。

ヒースキットTC-2の回路図はあちこちにあります。たとえば
https://elektrotanya.com/heathkit_tc2_tube_checker_sch.pdf/download.html

レストア記録としては、https://www.ne.jp/asahi/myamada/tube/tc-2/index.htmhttp://home.a00.itscom.net/vt62/TC2/TC2.html などがあります。というわけで修理情報は十分です。

エミッション計測型でgmは測れませんが手持ちの管の動作可否(の可能性)のみでも個人的には十分です。

機能はシンプル・回路もシンプルですが、配線自体は面倒です。多様な真空管仕様に対応させるためスイッチ配線が複雑なんです。

無水エタノールとKUREエレクトロニッククリーナで拭き拭きしました。固まってるネジ類は自転車整備のお供「ラスペネ」君に手伝ってもらいます。気になるさびは800番ヤスリ。ばらして洗浄すべきですが気力が続かないのでこれでよしとします。

使うには真空管型番に対応したスイッチ切替表(instruction card/chart sheet)が必要です。幸運にもカードは散逸せずに筐体背面のカード差込用スペースに入ってました。本製品は1955年(?)のものですので、それ以降発表の真空管についてはカードを参考に同一ピン配列・電圧のものを探すことになります。

ちなみにヒースキットTC-2には筐体前面に手回しドラム型の表示窓があります。しかもサイドライトがあるので綺麗です。

さて、上のようなざっとした内部清掃だけでは動きませんでした。


(1)メータ(1mA)の針が腐食して折れている。
(2)配線が腐食して断線(およびスイッチ類の接点不良)。
(3)ネオン管が壊れている。

メータ自体は生きてました。細い銅線を針にしてメータ根元に極細の銅線を巻いて金属接着剤で固定します。針の重量で動作角度が変わると思われますが、それはそれとして。

(2)の断線についてはしこしこ通電チェックします。
ヒータトランスなどは電圧が来ているので一安心。
セレン整流器!も機能しており、コンデンサの容量抜けもなさそうです。
明かな断線に加え他のあやしい箇所を見つけては再半田でしのぎます。スイッチ配線系統が多いです(5カ所ほど修復)。さびてる線が多いので本当は線を全取替えが好ましいんですが面倒なのでとりあえずこれで。接点不良もいくつかありました。接点復活剤は使いたくないので手間ですが無水エタノールと綿棒・カッターで頑張りました。
(3)のネオン管は手持ちがあったので取り替えました。サイズが違うので筐体の写真でわかるように大きな座金をはめて固定しています。

動くようになりました(ST管については未チェック)。少なくとも相対値はわかりそうです。軽微な修理で済んだ、ということにしておきます。本体右下にあるメータのOFF/ONスイッチ(SHORT=通電で表示0位置、TEST=断線でメータ作動)は上部にギザギザのある小さなオルタネイトスイッチのため操作していると指が痛くなります。本当はこの機会にモーメンタリNCタイプに交換したほうがいいのですが、手持ちがなく(あったはずだが探せないというよくあるパターン)とりあえずこのままにしました。いつか使うときがくるでしょうから(ホントか?)その時に交換したいと思います。

ところでチェッカーの動作以上に気になっていたのが製造元のCommercial Trades Instituteがなにものか、でした。 グーグル君の助けを借りたところ、

(1)シカゴにあった。いまは無くなっていると思われる(現在情報がない)。

(2)昔の建物は次のような写真(イリノイ大学図書館所蔵。画像は利用自由・・らしい may beと書いてました)。
建物は1890年から1970年まで存在していたようです。駐車中の車はシボレー (ベルエア)ぽいです。まったくの車音痴ですが『アメリカン・グラフィティ』でハリソンフォードが乗ってたのでなんとなく車影は覚えてます。であれば、50年代後半から60年代初頭あたりの写真でしょうか。(アメリカン・グラフィティは1962年夏が作品舞台)。

(3)「商業」の名がついていますが電気・設備関係の教育機関らしいです。eBayで売っている同機関のポストカードには、冷凍庫やAC配線の訓練写真が載っていました。リンク切れを恐れずURLを貼っておきます。https://www.ebay.ca/itm/353415895902
カードには「ええ取引するにはちゃんと訓練しとかなあかんで」(BETTER TRAINING IN BETTER TRADES)という標語が書かれてありました。冷凍庫メンテナンス教則本などの出版事業もしています(amazon書誌情報によれば)。Instituteですので、MITがかつてそうだったように(MITは工科大学と訳されてますが、オリジンは農業者育成・農業改良開発のために民間が作った組織)、実践的pragmatic な教育機関っていうイメージだと思われます。

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