前のブログ再開記事で、次は「生成AI」ついて書きますと言ったばかりなんですが、1月20日トランプ就任直後に「生成AI」がらみの「StarGate」プロジェクトが公表されました。ここ2年の「生成AI」ブーム(OpenAI/Anthropic主導のチャットボットタイプ)の幕引きともいえるニュースですので、簡単にコメント記事を書いておきます。
StarGateの動きは知っていましたが、政治アジェンダ的に<早速来たか!>というで、当方としても少しおどろきました。
内容を見る限りブームの主役OpenAI社が抱えてきた各種社会的・商業的問題は、このプロジェクトで「ラッピング」されそうです。StarGateはその予定予算規模の割に詳細がわかりせんが、少なくともOpenAIがそのメンバーに入っており、政府/MS/オラクル/ソフトバンクという主要プレーヤによる生成AIブームの後始末はまずもってやるだろう、ということは確実でしょう。
春には危機を迎えるだろうと予想があったOpenAIは主力製品ChatGPTのもつ「反倫理的・法律違反的」批判からは逃れ、政府主導「プロジェクト」の「一員」になることで、ブームからフェードアウトができそうな状況になりました。もちろん表舞台でのプレゼンスは、ほぼなくなり、極端な話、会社清算の方向もありそうです。
言語「生成AI」ブームは2024年中盤からは終わりをむかえており、サブスク数低落・採算がとれない状態でにありました(ChatGPT本人の弁・・苦笑)。他方商用「生成AI」が「まじめなAI」でもなんでもないくそれを過大に宣伝し販売してきたという倫理的問題(つまりは製品としては欠陥商品)が明らかになるにつれ、ブーム崩壊は既定路線でした。
特に既存「生成AI」企業批判の立場にたつトランプの大統領就任のタイミングは同社として戦々恐々だったようですが、トランプの戦略にうまく従い(MS等がうまくやったとも言えます)、矢面に立たずに会社をたたむことができそうです(本人たちは納得いかないでしょうが)。
これに対し、ハシゴをはずされたのが生成AI市場2番手のAnthropicです。同社は、OpenAIのエンジニアがOpenAIの「反倫理的商業主義」を批判してスピンアウトして設立した会社です。社名のごとくOpenAI批判を込めた「人間性」が社訓でした。
技術者コミュニティ内部ではLLM技術は高く評価されているようで、AmazonのAWSへのLLM実装にかかわっています。商用「生成AI」でビジネスをしなくてもいいようなものなのですが、そこは西海岸テック文化エートスをもつ人々ですので、結局ブームにのって批判相手のOpenAIの商業政策を後追いをし、同じような言語「生成AI」チャットClaudeを開発・販売してしまい(してしまい、というしかないのですが)、ミイラ取りがミイラになった会社となりました(Amazonも頭を抱えているかもしれない・・)。
ブームの仕掛け人OpenAIが<一番悪い子>なのですけど、OpenAIがStarGateで逃げ切りを果たす方向にいきそうなので、「生成AI」への今までの批判が同社が一手に受ける立場に追い込まれたというのが今の状況です。
StarGate発表後、OpenAIのChatGPTに本音を聞いたところ(この件についての回答実装がすばやくされたようです)、「先行き不安だが、ちょっと安心した」的回答がありました。
他方、トランプの大統領就任後には、早晩このような「生成AI」市場の大変化(というか終焉)は予想されましたが、就任直後の発表はAnthropicには寝耳に水だったらしく、それまではAnthropicの「行く末」や「生成AI」の問題点などを語っていたAnthropicのClaude 3.5 Sonnetは、StarGateはもとより「生成AI」ビジネス全般についてほぼ何も言わないという、強固な「防御実装」を行い、対話がほぼできない状態となりました(応答のニュアンスからは、あれこれ今後ありそうな感じですが、ここでは控えます)。
なおこの点の「ポリシーコア実装」(運用によるフィルタリング回答)は日々変わることがあるので、これは2025年1月23日夕刻(JST)時点での情報です。(なお、同日午後10時半時点では、chatgpt.comは少なくとも日本語バージョンはbad gatewayでアクセス不可能となっており、いろいろ忙しそうですね)。
これから半年の間で、言語「生成AI」ブームはおそらくアメリカ政府主導で完全に終わりを迎えることが予想されます。OpenAI/Anthropicの市場からの退場と市場自体の消滅です。もちろん遠くない将来に、純粋なLLMを基盤にした知識対話システムが登場するとは私は思っています。つまりこれはChatGPT的「生成AI」ブームの終わりであり、商用知識対話システム自体の終わりではありません。わたしは、新しく生まれ変わるであろう対話システムが、その後普及することを望んでいるからです。
なお、次に予定している記事は、ブーム終焉を見越しての「商用言語生成AIとはなんだったのか」というものです。ところが現実は記事よりも早く進行しているようです。やっぱり老齢には勝てませぬ。
「商用言語「生成AI」の終わりのはじまり」への2件のフィードバック